昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

飽きの現象学 第二章 飽きの美学

『飽きの現象学』第二章 飽きの美学


●飽きについての考察は、美学における「美の永遠性」という考え方に異議をとなえる。永遠の美とは単に机上の空論であり、そのような美は存在しない。「飽きないもの」という美の定義は覆されるべきである。
●また、芸術体験を「本質的なものの直観的把握」としてのみ捉える考え方も私は拒否する。そのような考え方では、なぜ我々がある作品を鑑賞することに飽きるのかという問題が説明できない。本質的なものを見るのが芸術体験であり、それが人間にとってすばらしいことならば、ずっと観つづけて楽しんでいればよいではないか。だが我々は同じ作品、(また、同じ風景)をずっと観続けていると、しだいにうんざりしてくるのだ。それはなぜか?「本質的なものの直観的把握」の理論はこの問題を解決できないという点で、不十分、もしくは間違っている。
●われわれは飽きという現象をふまえて、もう一度美的経験を考え直さねばならない。
●まずは、第一章の議論を踏まえて、二つの飽きに関わる美学的テーゼを提出しよう。