2011年度、分析美学の授業がある大学をまとめてみました。
まず、概論系の授業
東京大学
安西信一「美学入門」(夏学期、火曜3限)。
教科書はこちらRoutledgeのCompanion to Aesthetics, 2nd, ed. Berys Gaut and Dominic Mclver Lopes, 2005。
The Routledge Companion to Aesthetics (Routledge Philosophy Companions) Dominic Lopes Routledge 2005-07-28 売り上げランキング : 1050 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
上の文献の一章づつを、毎回担当者(複数の場合もありうる)を決め、要約し、発表し、全員で討論する。担当者はレジュメをあらかじめ用意すること。
具体的には次の項を読む予定:「芸術の定義」「芸術の存在論」「美的なもの」「趣味」「美的な普遍概念」「芸術の価値」「美」「解釈」「想像力と見せかけ」「虚構」「芸術と倫理」「高級芸術対低級芸術」「環境美学」「フェミニズム的美学」
(東大は学外にはシラバス公開してないのですが、学内の方はUT-mateでシラバス見れます。科目番号は04110613。
あと、簡単な授業内容は研究室のホームページでも見れます。→ http://www.l.u-tokyo.ac.jp/bigaku/syllabus.html)
上智大学
樋笠勝士「分析美学研究」(秋学期、木曜3限)
教科書は、 Peter Lamarque and Stein Haugom Olsen (ed.): Aesthetics and the Philosophy of Art: The Analytic Tradition, (2008)
Aesthetics and the Philosophy of Art: The Analytic Tradition: An Anthology (Blackwell Philosophy Anthologies) Peter Lamarque Wiley-Blackwell 2003-11-03 売り上げランキング : 192894 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
分析美学の問題意識には、「芸術」の定義や概念について、その存在性格について、その「美的」内容や価値について、作品の理解や解釈について、など、芸術や美学に関する本質的な問いがあります。なるべく多くを読みたいと思っています。
シラバスはこちら→ http://www.sophia.ac.jp/syllabus/2011/0201/0201_HPH54000.html
成城大学
河合大介「美学入門」(通年、火曜3限)
教科書は、上智と同じ。
以下に挙げるテクストについて,それぞれ二回にわたって講義する(ただし進捗状況によって変更する場合がある)。
1.イントロダクション
〈意図と解釈〉
2.「意図と解釈:復活した誤謬」(Monroe C. Beardsley, 1982)
3.「措定された作者:統制的理念としての批評的一元論」(Alexander Nehamas, 1981)
4.「作者の死:分析的検死解剖」(Peter Lamarque, 1990)
5.「構成主義者のディレンマ」(Robert Stecker, 1997)
〈アートにおけるイメージ〉
6.「映画の力」(Noel Carroll, 1985)
7.「図像的再現について」(Richard Wollheim, 1998)
〈アートの特性〉
8.「美学的概念」(Frank Sibley, 1959/1978)
9.「芸術の諸範疇」(Kendall L. Walton, 1970)
〈アートの定義〉
10.「美学における理論の役割」(Morris Weitz, 1956)
11.「アート・ワールド」(Arthur C. Danto, 1964)
12.「何がアートなのか?:制度的分析」(George Dickie, 1974)
13.「アートの歴史的定義」(Jerrold Levinson, 1979)
シラバスはこちら→ http://seijo.e-jugyo.jp/search/4200.php?Jyugyo_Code=20110102041061
群馬県立女子大
北野雅弘「美学特講2(分析美学の諸問題)」(前期・後期(曜日はわからない・・・))
教科書は指定なし。
前期では「美的経験」と「芸術の定義」について、後期では「芸術の存在論」「芸術の価値」「芸術の解釈」を扱う予定。
シラバス→ http://www.gpwu.ac.jp/stu/life/syl/23/23syllabus_aes.pdf
感想
まぁ教科書は、東大のやつが入門者向けでいいと思います。
内容もかなり網羅的ですし。記述も易しいです。
成城・上智のやつは、学術論文のアンソロジーですので、内容的にちょっと難しいものもありますが、専門的な議論の面白さを学ぶにはいいと思います。河合さんの論文セレクトも、悪くないと思います(いくつか難しい論文あるけど)。
(分析美学の教科書については、また、日を改めて書くことにします。)
書きました⇒ http://d.hatena.ne.jp/conchucame/20110411/p1
つぎに講読系の授業です。
東京大学
西村清和「原典講読:分析美学」(夏学期、水曜3限)
現代アメリカの分析美学を代表するArthur Dantoの論文、Learning to Live with Pluralism, 1991, を読むことで、ダントーのいう「芸術の終焉以後」の現代のアートの情況について考える。
(科目番号は04110602)
あと大学院生向けですが、
西村清和「分析美学研究」(通年、水曜4限)
退官年にあたる今年は、Arthur DantoのThe Transfiguration of the Commonplace, 1981を読みます。
The Transfiguration of the Commonplace: A Philosophy of Art Arthur C. Danto Harvard University Press 1983-03-15 売り上げランキング : 999 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
(科目番号は21110801)
ほかの大学でも、講読系の授業があると思うのですが、まだ情報が不足してます。
分析美学の授業で情報をお持ちの方は、コメント欄なりメールなりツイッターなりでお知らせください。
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そして、上手く行けば、今年中にこの教科書の翻訳が出ます。(勁草書房から。)
もう全文訳し終わったのですが、現在鋭意、訳の改訂中。もうしばらくお待ち下さい。
Aesthetics and the Philosophy of Art: An Introduction (Elements of Philosophy) Robert Stecker Rowman & Littlefield Pub Inc 2010-03-16 売り上げランキング : 102218 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2013/05/29追記
出ました。タイトルは『分析美学入門』です。
では。
日を改めて、分析美学の教科書についてのエントリも書きます。たぶん。
(後日追記:書きました→ http://d.hatena.ne.jp/conchucame/20110411/p1 )
(2011年5月30日追記)
※京都大学でもArthur DantoのThe Transfiguration of the Commonplace, 1981の講読の授業があるようです。
京大はシラバスを出してないので、詳しいことはわからないのですが、先生は杉山卓史先生、学部生向けの授業ですね。(木曜一限、8時45分から。はやー。)
※2011/10/31追記
調べたところ、金沢美術工芸大学で川上明孝先生が大学院向けの授業で分析美学やってるらしいです。
通年。定員4人!
ヨーロッパで18世紀に誕生し19世紀に確立した「美学aesthetica」は、20世紀の多様な芸術現象を前に有効性を持ちえず、新たな変革を迫られているようにみえる。
そのような美学の変革の試みの一つとして、分析美学をとりあげる。テキストは、以下の中から、受講者と相談して決める。
Monroe C Beardsley, " Aesthetics Problems in the Philosophy of Criticism-",
Indianapolis,1981
Noe¨l Carroll, " A Philosophy of Mass Art ", Oxford, 1998
Noe¨l Carroll, "Philosophy of Art", NY, 1999
Stephan Davies,"The Philosophy of Art", Blackwell, 2006前期:受講者毎に担当を割り振って、文献の一文一文を正確に日本語に訳していく。
後期:受講者毎に担当を割り振って、大きなまとまり(章、節、短い論文なら論文全体)を要約し、レジュメで紹介する。内容及びテクストに関しては変更がありうる。
文責:森功次