昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

九鬼周造記念シンポジウム 「愛と人生の価値」で「子育ての美学」という発表をします。

表題のとおりです。

甲南大学の吉川さん企画です。

源河さんは「結婚」と「不倫」の話で、僕が「子育て」、全体的なテーマは「愛と人生」という、なんか壮大なイベントになってます。

 

 

イベントの告知ページはこちら。

第5回九鬼周造記念シンポジウム 「愛と人生の価値」|イベント一覧|甲南大学 人間科学研究所

 

【日時】3月18日(月)14:00-16:00
【会場】甲南大学岡本キャンパス(18号館3階講演室)
入場無料(申し込み不要)。当日,会場まで直接お越しください。

提題
「結婚と不倫の道徳哲学」 源河亨氏(九州大学
「子育ての美学」     森功次氏(大妻女子大学

※発表タイトルは仮のものであり変更されることがあります。

【司会】吉川孝(甲南大学

 

以前、『美学の事典』に「子育てと美学」という項目を執筆しましたが、今回の発表はそれをふくらませた内容になります。そのうちどこかできちんと形にしたいテーマです。

 

 

 

 

その他の近況報告

  • 『対話型鑑賞のこれまでとこれから』の記録論集が9月に出ました。第6章「対話型鑑賞の功罪:美的知覚の観点から」を執筆してます。
  • いまは芸術的価値についての原稿を書いてます。おそらく来年に出る文化政策系の論集に載る予定です。
  • 「美的達成を反快楽主義の立場から再検討する:非エキスパートの教育という観点から」という課題名で科研費が通ったので、今後はしばらく美的教育の研究をします。
  • 1月末に下の子が緊急入院になって、一週間ほどつきそいで病院でずっと寝泊まりしてました。今は元気です。
  • 東大の銭清宏さんの博論審査に参加しました。とても良い博論なので、みんな読んだほうがいいと思います。
  • 2月は学生引率&学務でカナダ(トロント)とアメリカ(ポートランド)に行ってました。物価高すぎ。
  • 来年度も慶應の非常勤は継続です。あと夏は新潟大学で、冬はまた弘前大学で集中講義します。
  • なぜかよくわからないノリの結果、子供二人と一緒に坊主頭にしました。家が寺みたいです。

 

【翻訳が出ました】ロペス、ナナイ、リグル『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』

翻訳が出ました。

 

ドミニク・マカイヴァー・ロペス、ベンス・ナナイ、ニック・リグル著

『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』

森功次訳、勁草書房、2023年

 

原著はDominic McIver Lopes, Bence Nanay, Nick Riggle. Aesthetic Life and Why It Matters, Oxford University Press, 2022

(原著刊行の翌年に翻訳刊行です。早い!)

 

ステッカー『分析美学入門』、キャロル『批評について』に続く、3冊目の翻訳です。よろしくお願いします。

ジュンク堂池袋本店では「1階話題書アカデミック塔」のところにも並べれられているそうです。ありがたい。

 

 

以下、この本および関連情報の紹介です。

 

本書であつかわれる問題は、次のようなものです。

知識とか道徳の面では完璧な世界であっても、美や感動がなかったら、つまらない、退屈な世界になる。なぜ美や美的価値は大事なのか? なぜわたしたちは美を気にかけるのか?

本書では、現代美学を代表する論者3人が、この問いに取り組みます。

  • ナナイは「達成」という観点から、
  • リグルは「共同体」という観点から、
  • ロペスは「冒険」という観点から、

この問いに答えようとしています。

「気持ちいいから」「心地よいから」「進化論的に大事だから」みたいな単純な答えではないところが、この本のミソです。

 

本書は、学部の初年次教育用に書かれたテクストです。なので、基本的には、専門的な背景知識なしでも読めるようになっています。

授業用テクストなので冒頭に「教員向けのノート」というのがついてるんですが、ここは哲学初学者には情報が詰まりすぎている感もあるので、最初は飛ばして最後に読んでもいいと思います。本書の理解を広げる面白い補助線がたくさん引いてあるところなんですけどね。

 

 

本の最後には「ブレイクアウト」のパートがついていて、ここでは、著者3人たちがさらに話題を広げながら対談をやっています。扱われるテーマは、「意見対立」「主観主義」「民族中心主義」「流行(ファッション)」「美の神話」です。

この箇所はとても面白いし大事な教訓がいろいろと書かれているので、美学・芸術学の授業をやる先生はぜひ読んで下さい

 

 

「なぜ美を気にかけるのか」という問い自体はすごく素朴なものですが、この問いが現代美学においてどのような位置づけにあるのか、という点については訳者あとがきで少し解説しました。

「訳者あとがき」はすでに勁草書房のHPで公開されてます。

https://keisobiblio.com/2023/07/18/atogakitachiyomi_nazebi/

現代分析美学では、この問いをめぐってけっこう熱い論争状況が生まれています。本書は学部生の初年次教育のために書かれた本ですし、特に背景知識なしでも読める本ですが、専門家はまた違った角度から楽しめると思います*1

 

8月末に発売の『フィルカル』Vol.8, No.2には、「あとがき」とはまた別の観点から本書の解説・紹介記事を書いています。出るのはまだすこし先(8月末)になりますが、興味ある人はどうぞ。

※フィルカルのこの号は特集「作者の意図、再訪」(第2回)など、いろいろな話題をあつかっていて面白いのでオススメです。

 

 

 

ひとつ告知です。

美学会東部会の特別例会として、本書の刊行イベントをやることになりました。

 

美学会東部会特別例会

『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』翻訳刊行記念ワークショップ

8月28日(月)19:00より、オンラインにて開催(zoom)

 

登壇者:
森功次(訳者、大妻女子大学
田中均(コメンテーター、大阪大学
銭清弘(コメンテーター、東京大学

 

 

無料で誰でも参加可能です。学会の例会イベントという形にはなっていますが、一般の人でも聞けるものなので、興味ある人はぜひどうぞ。学会の広報イベント的な側面もあるので、僕はできるだけ非専門家を意識した話をするつもりです(まぁ美学会という学会自体、半分以上のメンバーは哲学の非専門家なんですが)。

詳しい情報はこちらをみて下さい。zoomリンクなどもこちらにあります。

東部会例会 - 美学会

 

 

詳細な目次はこちらにまとめました(こういう詳細目次って、出版社も出さないんですよね。なぜ?)。

目次を見るとわかりますが、リグルのパートは「食べ物」が大きなテーマになってます。料理・食事の哲学に興味がある人はぜひ呼んでみて下さい。

 

ドミニク・マカイヴァー・ロペス、ベンス・ナナイ、ニック・リグル

『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』

森功次訳、勁草書房、2023年

Dominic McIver Lopes, Bence Nanay, Nick Riggle,

Aesthetic Life and Why It Matters,

Oxford University Press, 2022

 

目次

 

教師向けのノート

イントロダクション

1.あなたの美的生活

2.美学版ソクラテスの問い

3.気を配るのはなぜか

 

1.経験を解き放つ(ベンス・ナナイ)

1.美的なことがらに気を配るのはなぜか

 1.1 第一の答え――わたしたちは美的なことがらに気を配っていない

 1.2 第二の答え――わたしたちは美的なことがらよりも娯楽に気を配っている

 1.3 第三の答え――わたしたちが美的なことがらに気を配るのは他人に良く思われるためだ

 1.4 第四の答え――わたしたちが気を配るのは自分にほれぼれしたいからだ

 1.5 第五の答え――わたしたちが気を配っているのは美的判断だ

 1.6 第六の答え――わたしたちが気を配っているのは美的経験だ

2.達成としての美的経験

3.社会の接着剤としての美的経験

 

2.美的生活――個性、自由、共同体(ニック・リグル)

1.~なき世界?

2.食べ物

3.美的価値

  3.1 個性

  3.2 自由

  3.3 共同体

 

3.足を踏み入れる――美的生活における冒険(ドミニク・マカイヴァー・ロペス)

1.違い

2.複数の観点

3.多元主義

4.冒険

5.論証

6.社会学

補遺:細部の説明

 

ブレイクアウト  

1.意見対立

2.主観主義

3.民族中心主義

4.流行

5.美の神話

 

訳者あとがき  

 

 

では。

また何か思いついたら、追加で解説記事を書くかもです。

 

 

 

ついでに近況報告

*1:なお、あとがきでも触れているナナイのHPの業績表はこちらです。

https://bencenanay.com/publ.htm

【告知】VTC/VTS日本上陸30周年記念フォーラム2022 「対話型鑑賞のこれまでとこれから」

こちらのイベントで登壇します。

 

VTC/VTS日本上陸30周年記念フォーラム2022 「対話型鑑賞のこれまでとこれから」

www.acop.jp

 

昨年いくつかこの手のテーマで文章を書いたり講演したりしてたんですが、それをきっかけにお声がけいただいたっぽいです。

こないだ事前の打ち合わせやったんですが、みな『美術手帖』の文章を読んでくださってて、かなり恐縮しました。

 

 

人文系学会に所属する身としては「参加費高い!」という印象なんですが、先日の打ち合わせのときに聞くと、現地参加の申込みもすでに結構来てるっぽいです(オンライン参加とほぼ同数の現地参加申し込みが来てるらしい。びっくり)。

キャパがあるので、現地参加を考えてる人は早めに申し込んだほうがいいかもです。

 

追記:当日の発表資料はこちらです。

https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/236789/f0ef609ee69b229a919064d09465a203?frame_id=582577

 

 

【近況報告】

  • 今年の春頃引っ越ししたんですが、ようやく生活が落ち着いてきました。長男が夏休み入って子守が大変なので、暇な人は遊びに来てー。
  • 新居が坂の上なので引越し後にすぐ電動自転車買うつもりだったんだけど、結局買わずにきてる。登坂力がついた。少しやせた。
  • コロナ禍になってサッカー全然できてない。サッカーしたい。
  • トップガン マーヴェリック』最高でした。見る前に予告編見なくてほんとよかった。
  • サンダル苦手だったんだけど、今年からサンダル生活にチャレンジしてる。まだ慣れない。
  • 次男の髪を切ったら急激に自分に似てきた。おもしろい。
  • 各種の翻訳仕事はちまちまと進めてます。もう少し待ってください。
  • 今年の夏は慶應の非常勤で、実験的に「オンライン(資料配布式)の回と対面授業(ディスカッションメイン)の回を交互にやる」という形式で授業やってみたけど、学生の反応は結構良い。後期もこれでやるつもり。