昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

銭清弘『芸術をカテゴライズすることについて』合評会に登壇します(5/23)

こちらの合評会に登壇します。

 

2026年度第1回美学会東部会例会

2026年5月23日(土)

当番校特別企画 銭清弘『芸術をカテゴライズすることについて 批評とジャンルの哲学』(慶應義塾大学出版会、2025年)合評会
著者:銭清弘(オンライン/ブリティッシュコロンビア大学)
評者:大岩雄典(東京大学)、小田原のどか(横浜国立大学)、森功次(大妻女子大学)
司会:青田麻未(上智大学)
zoomでのリアルタイム配信: 有

 

自分で言うのもアレなんですが、登壇者が豪華な会になってます。いろんなアプローチからこの本を読む会になるかと。

非会員も参加可、無料です。

zoomのリンクなどはこちら。

www.bigakukai.jp

 

私は銭さんの本については以前ブログでも宣伝したんですが、今回はまた別の角度から理解を深めるためのコメントをいくつかするつもりです。いま原稿準備してますが、専門家の観点からの有益なコメントを出せると思います(自画自賛)。

 

 

 

 

 

ほか近況報告

  •  論文「芸術的価値の経験説と達成説:ハイブリッド説という提案」が掲載された論集、小林真理・阪本崇・友岡邦之(編)『文化政策のフロンティア3 文化政策と価値』が6月末に出ます。3巻本シリーズの3冊目。
  • フランク・シブリーのApproach to Aestheticsの翻訳原稿を入稿しました(共訳)。出るまでもう少々お待ちください。
  • 東大出版会の『冒険者たち』シリーズの分析美学編の原稿がほぼ集まってきました(共編著)。こちらもそのうち出ます。
  • 『発達』での連載「子育てと美学」も継続してます。第五回は「子どもにかわいいとつたえることについて」。
  • 東大での非常勤が始まってます(春学期、木曜3限)。外部聴講したい人はアレしてください。秋学期は慶應です。冬の集中講義が弘前大。
  • 単著書いてます。がんばる。
  • 夏に仕事でベトナムに行くかも。

 

 

 

銭清弘『芸術をカテゴライズすることについて:批評とジャンルの哲学』

読了。

とても良い本なので、みなさん読みましょう。

謝辞で私の名前を挙げて下さってるので、あんま私がべた褒めすると「お返しヨイショ記事」みたいになってイヤなんですが、それでも褒めざるをえない良い本です。おすすめ。

 

 

 

まず全体として。多くの関連文献をきちんと自分の頭で整理し、そのうえで自分の立場をしっかり出している、自信と勇気に満ちた本だ。その証左として、「~かもしれない」みたいな「逃げ」の表現がほとんどない。これはかなりすごいことだ。かっこいい。

 

すこし踏み込んで美点をいくつか挙げると

  • 「鑑賞の主観的側面から出発し、その後で客観的制約を満たすよう修正する」というヒューム的アプローチを示した上で、その逆を行く(つまり先に鑑賞の客観的側面から出発し、その後で主観的制約を満たすように修正する)という本書全体の方針がおもしろい。チャレンジング。(ちなみにこの方針は、キャロル=アリストテレス的な目的論的アプローチとも違う点で、キャロルの『批評について』の一歩先に進もうとするものでもある)。
  • 4章~5章の部分は、ウォルトン「芸術のカテゴリー」の良い副読本になっている。日本語でこうした細かい話が読めるのは貴重(ただ私と銭さんのウォルトン解釈はちょっと違うが)。
  • 現代のジャンル論の基本的な見取り図が得られる。これも有益。「ジャンルって何なの?」という疑問をもっている人は必読。
  • 6,7章は著者の博論の中核(および英語論文)が元になっている最も専門性の高い部分でちょっと難しい。私は博論審査もやったし何度も読んでるので理解できるが、最初にこの話を読む人はちょっと難しく感じるところだと思う*1。ただ、ここは著者の学術的主張が最も出ているところでもあるので、頑張って読んでほしいい(し、卒論とかでこの本をあつかう人にとってはしっかり検討に値する部分だろう)。
  • 一転して一気に読みやすくなる8章では、「批評の意義は判断の柔軟性を養うところにあるのだ」という面白い批評観が出されている。ここではグエンのゲーム論、美的鑑賞論が紹介されていて、それも有益。
  • ところどころに挟まれているコラムがとても良い。これは「面白いコラム」という意味ではなく、このパートで著者は似た立場や論敵の議論をしっかり紹介をしていて、そこがかなり勉強になるのだ(とりわけGorodeiskyの議論が紹介されているp.70-76のコラムは、この部分だけでもコピーして学生に配る価値はある)。

 

随所随所でチャレンジングな主張が明晰に出されている本なので、ゼミとかで検討ディスカッションするにはとてもよい本だと思います。語義の解釈に悩んだりしなくていい。話題としてはすごく日常的なものだし、事例も豊富なので、学生も意見が出しやすいだろう。(教員向けアピール)

 

 

いろいろ書いたが、日本語で読める分析美学の代表的な著作のひとつとして、全力でおすすめできる本だ。現代美学の最前線の議論が、これだけの明晰さで入手できる。コスパめちゃくちゃ高い。そして、実際の価格もそんなに高くない。迷うなら、今すぐ買え。この分野に興味がある人であれば、遅かれ早かれどうせ買うことになる。

 

※2025年12月29日追記

著者による解説記事&web版あとがき&方法論的背景の補足、のリンクを載せておきます。

note.com

note.com

obakeweb.hatenablog.com

 

 

*1:この本、最初は「美学とは」「分析美学とは」みたいな基礎的な解説をしてる割に、ここらへんで一気にハードルが上がる形になっているんですね

ワークショップ「子どもを感じる、子育てから感じる――美学者が見る子どもと育児」&近況報告

李太喜さんの企画で、青田麻未さんとこのようなワークショップをやることになりました。

ワークショップ「子どもを感じる、子育てから感じる――美学者が見る子どもと育児」

2025年12月14日(日)14時~@東大駒場

参加無料・要登録です。子連れ参加OKになってます。

utcp.c.u-tokyo.ac.jp

 

僕は「子どものかわいさについて考える」という題目で話題提供をします。

『発達』で連載している「子育てと美学」の内容をざっと紹介する形になると思います。

ワークショップなので、いろいろ意見もらって批判してもらえるとありがたいです。

 

 

 

近況報告

  • 現象学年報』に『サルトル:風通しのよい哲学』(赤阪辰太郎・著)の書評を書いてます。(リンク先PDFです)https://pa-j.jp/journal/41.pdf
  • サルトルバタイユ」をテーマにした論文も夏終わりに提出したので、それもそのうち出ると思います。まだゲラ来ないけど。
  • サルトル学会では今期から学会誌『エレウテリア』の編集長を務めます。もうすぐ次号が出せると思います。
  • 美学会のほうでも、今期また委員(『美学』編集担当)を務めることになりました。これからまた3年間です。つらい。
  • 『分析美学入門』(6刷)、『ワードマップ現代現象学』(7刷)が増刷になりました。ありがたい。
  • 1年半前くらいに原稿出した「芸術的価値」について書いた論文がそろそろ出ます(もう校正は済んだんだけど、まだゲラ返してない人がいるらしく、もう少し時間かかりそうですが)。
  • 昨年東北哲学会で発表したやつは論文になりました。印刷版はもっと前に出てたんですが、最近PDFも公開されました。
  • 「作品を遊び物にする鑑賞」を特徴づける

  • 『発達』での「子育てと美学」の連載は順調に続いてます。こないだ第四回の原稿を出しました。
  • 単著企画が正式に通ったので単著書きます。
  • 来年の非常勤は、前期に東大、後期に慶應になりました。慶應はいままで通年でやってた内容を削らないといけないので、どうするかちょっと迷ってます。(もう東大・慶應で内容分けて全部出ると通年の内容になる、という形式でやってもいいんだけど)。この分析美学講義の内容も、そのうち本にする予定。
  • 風邪引いたら体重が激減して、足が少し速くなりました。
  • 1月はまた学生引率で韓国に行きます。2月は弘前大学で集中講義。