昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

分析美学を学べる大学2012年度(平成24年度)

2012年度に行われる英米系美学の授業のまとめです。
情報漏れがあるとおもわれるので、もし「うちの大学でもこんな授業あるよ!」というのがあればお知らせください。
最初に講義系の授業を、そのあとに購読の授業をまとめてます。


ちなみに去年のはコチラ→
そして分析美学の教科書紹介はコチラ→


ます講義から

東京大学
三浦俊彦「分析美学の諸問題」木曜3限

「分析美学」は、二つの側面によって特徴づけることができる。一つは、メタ批評・メタ美学という側面。美や芸術作品を直接対象とはせず、美や芸術を語る言説の論理構造を研究対象とすることによって体系的理解を洗練する「分析哲学の一分野」としての美学である。もう一つは、経験科学的美学の基礎づけ的側面。情報理論や生物学・心理学によって得られた知見を美や芸術作品の研究に直接応用するための概念整理としての学である。論理学的・規範的な前者と、実証的・記述的な後者という互いに対照的なアプローチを比較検討することから、美や芸術への新しい展望を模索しよう。両アプローチがともに、形而上学的思弁を旨とする「上からの美学」に抗して各個解決を図る「下からの美学」であることに注目したい。ただし、分析哲学の主流がいつしか形而上学存在論)となっている現状に照らし、分析美学の一般傾向の枠内にきわめて形而上学的な思索の可能性が胚胎していることにも論及する。

http://catalog.he.u-tokyo.ac.jp/ug-index




成城大学

津上英輔&河合大介「美学と心理学」木曜2限
教科書  Elisabeth Schellekens and Peter Goldie (eds.) The Aesthetic Mind: Philosophy and Psychology,(Oxford, 2011)
この本の内容に則しつつ、講義をするっぽいですね。*1
http://seijo.e-jugyo.jp/search/4200.php?Jyugyo_Code=20120102041061



立命館大学
Nick Zangwill集中講義 5/7-11
集中講義の一部で、美学の授業をします。あつかうテーマは「Hume’s Standard of Taste」「Kant on Taste and Nietzsche’s critique」「Nature of art」「Art, creation and imagination」「Formalism」「Aesthetics of nature」。
美学の教科書はRobert Stecker (2005) Aesthetics and the Philosophy of Artです。*2

This course will cover central issues in the philosophy of mind (mind and body, and free will), moral philosophy (metaethics, moral psychology, and normative ethics), and aesthetics (art and beauty). There will be discussion in the seminar.

http://online-kaikou.ritsumei.ac.jp/2012/syp/show.php?course_code=31823




慶応大学
西村清和「プラスチックの木で何が悪いのか」火曜2限*3

人工芝や造花をはじめとして、人工のレプリカが自然物や自然環境にとってかわるという動きは、われわれが思っている以上に身近におきており、また受けいれられている。そうした動きは、環境倫理や環境美学の観点からして、はたして悪いことなのか。この問いは、じつは芸術作品における〈美的〉価値と〈倫理的〉価値の相関という、ふるくからの美学のアポリアにつながっている。本講義では、この問題に対するひとつの解答を探る。

https://gslbs.adst.keio.ac.jp/




つぎに購読系の授業を。

日本大学

佐々木健一「美学演習」 
文献 A. Danto, The Abuse of Beauty , Open Court , 2003
http://syllabus.chs.nihon-u.ac.jp/kougi/master_index.html



西村清和「美学特殊講義」
文献 Nelson Goodman, Languages of Art, 1976
http://syllabus.chs.nihon-u.ac.jp/kougi/master_index.html



東京藝術大学

松尾大 「美学関係英語論文読解」水曜2限
これはいろいろと論文を読む授業らしいですね。読む論文は松尾先生がセレクトしたものの中から、学生と話し合って決めるとのこと。
去年からの続きだとすると、Costello, Diarmuid (2008) "Danto and Kant, together at last?"を読むことになるらしい。
http://www.geidai.ac.jp/life/pdf/art2012_09.pdf




上智大学

樋笠勝士 文献講読VB(英語)「分析哲学と分析美学」木曜3限
文献 P.Lamarque & S.H.Olsen(ed.) Aesthetics and the Philosophy of Art, Blackwell, 2006
The Routledge Companion to Aesthetics, Routledge,2001*4

分析美学の問題意識には、「芸術」の定義や概念について、その存在性格について、その「美的」内容や価値について、作品の理解や解釈について、など、芸術や美学に関する本質的な問いがあります。P.Lamarque & S.H.Olsen(ed.) Aesthetics and the Philosophy of Art, Blackwell, 2006 を主に使用して、今回は特に「文学」に焦点を絞りたいと思います。最初に「文学とは何か」についてP.Lamarqueの綜合的な論文を読み、その後、分析美学系のJ.M.Robinson,S.H.Olsen,P.Lamarqueらの論文を読む予定です。

http://www.sophia.ac.jp/syllabus/2012/index.html




※追記(2012/05/19)
九州大学

倉田剛 分析形而上学の原典講読 金曜6限

Amie L. ThomassonのFiction and Metaphysics (1999)を受講者全員で読み解く。この著作(『フィクションと形而上学』)は、最もシステマティックな虚構的対象論の一つであるだけでなく、分析形而上学の営み全般を知る上でも重要な書である。

http://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~syllabus/cgi-bin/table-even.cgi?thisyear=2012&show=S02000000&big=B000000&search=&listprint=1&list=1



あとは、群馬県立女子大とか京都大学でも、英米美学系の授業ありそうなんだけども、シラバスがまだ出てない。。。

とりあえず、以上。
また情報が入りしだい、追加していきます。
情報をお持ちの方は、お知らせいただけると、わたしが喜びます。

*1:ただこの本、amazonで見ると2012の四月末発売になってるんだが、どゆこと?

*2:2010に第二版が出てますが、教科書指定は第一版。まぁわからんでもない。

*3:本のタイトルを講義名にするのはどーなのかー。

*4:これ第二版が2005年に出てますね。わたしとしてはこっちの方がオススメ。