表題のとおりです。
哲学界では「ついに出たか!」という感じで、あちこちで話題になってます。
詳しい目次はat_akadaさんのブログで見れます。
http://d.hatena.ne.jp/at_akada/20140303/1393852281
リンク先で本書の長所の簡単な紹介もされてますし、いまさらこの本全体についてのべた褒め記事書いてもしょうがないので、本ブログでは美学的観点から「本書読め」という提灯記事を書いておきます。
まぁこのブログ見てる人の殆どは美学に興味があるでしょうしね。
本書は現代形而上学についての解説・入門書ですが、美学に興味がある人にとって注目すべきなのは、第8章「人工物の存在論」です。
というのもこの章で、芸術作品などを例に、Amie L. Thomassonの依存関係を軸にしたカテゴリー論がけっこう丁寧に紹介されているからです。美学に興味ある人にとっては、ここの章を見るだけでもこの本は手に取る価値がある。
ThomassonはFiction and Metaphysics(1999)という本で抽象的人工物を扱うための理論を展開しています。その後トマソンは人工物一般について理論を発展させていってますが、Fiction and Metaphysicsは、芸術作品やフィクショナルキャラクターの存在論を考える上で、今でも必読文献のひとつです*1。
『ワードマップ』当該箇所の執筆者である倉田さんは、以前から論文集『哲学の挑戦』に「芸術作品の存在論―分析的形而上学の立場から」という論文を書いたりして、トマソンの議論を紹介されてました。
今回の『ワードマップ』では、その辺りの議論がかなりクリアに紹介されてます。そしてこの辺りの議論は『分析美学入門』でも紹介されてないところだったので、今回トマソン存在論が日本語で読めるようになったという意味で、この本は超オススメなわけです。作品やキャラクターの存在論に興味ある方は、ぜひ読んでください。美学系のゼミで論文紹介するために作品の存在論を扱っている論文を探してる方にも、オススメの箇所です。
『ワードマップ』全体では他にも、分析哲学的な議論の進め方についてなど、注やコラムで入門者向けの重要な指摘がたくさんなされています。とてもいい本です。分析哲学に興味が無い人も、とりあえず目を通しておくといいと思います。
というわけで、
マストバイと言える。
以上。バリバリの提灯記事でした。消費税上る前に買いましょう。安いし。