昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

西村清和『プラスチックの木でなにが悪いのか:環境美学入門』

社長の本が出ました。宣伝。



環境美学、環境アートに興味がある人は必読。
また、この本の半分程度は、自然環境以外の「醜」「廃墟」「風景」「香り」「味」「不道徳作品」といった考察にあてられてますので、そうした問題に興味がある人も、読んどくべきでしょう。
一部はリヒターについての現代アート論にもなってるし、そういう点では表象文化論のひと向けなところもあるんではないか*1
このようにいろんなトピックをあつかうあたりとか、随所随所の記述の明晰さとか、いろいろとさすがだなーってところがあります。
こうした、蓄積感を醸しだす記述は、私にはまだまだ無理です。
あと、単純に作品の具体例が多いから、おもしろいよ。



ただ正直いうと、僕はこの本を適切に評価できる立場にないのですね。
というのも、僕は社長と日常的にいろいろ議論しているし、今年は講義もでてるので、社長のほとんどの主張はだいたいわかるし、その背景の問題意識とかも補えるのです。
あと具体例の作品を、授業やゼミですでにたくさん見てるというのもあります。
そういう点で、僕自身すでに説得されている面も多いし、西村清和の主張のどのあたりに違和感があるのかもなんとなく自分で理解できてる。
そういうわけで、僕自身は、この本をまっさらな態度で読める人ではありません。


むしろ、そのへんについて何も知らないひとが、この本をどう読むかは興味があります。
読んだ人、ぜひ感想きかせてください。



ただひとつだけ言うと、入門書としては難しいかもなーという気はします。
たしかにいろんなトピックをあつかってるし、例は具体的でとっつきやすいのですが、ところどころで丁寧な解説なしに議論がどんどんと進んでいくので、そうした箇所では、当該トピックにある程度知識がないとついていくのは難しいかもしれません。
これはあくまで感想。個人的感覚なので、ひとによるとおもいます。
(そしてくりかえしますが、私はこの本を適切に評価できる立場におりません*2。)



あと、具体的な作品をたくさん挙げてるわりには、写真が無いので、作品知らないひとにはつらいかもしれません。
これはまぁ仕様がないといえば仕様がないことなんです。
現代アートの作品写真を載せようとすると、それなりにお金がかかるので、結果、本の値段がさらに跳ね上がることになるのですね。
ただでさえギリギリまで安くしているのに、これ以上値段を上げるわけにはいかんという苦渋の選択でしょう*3
まぁ作品の写真はネットで検索すればすぐ出るので、興味ある人は自分でググれ、もしくは授業出ろ(なげやり)。
また写真あつめてまとめブログ作ってもいいのだけれど、もう帰省してしまって本持って帰ってきてない・・・。上京後に興味が出たらやります。
つーか、俺がやると指導教官のゴマすってるみたいで嫌なので、誰かやれ。
著者から飯くらいおごってもらえるんじゃないか(経験談)。




ともあれ、くりかえしますが、
環境美学、分析美学に関心があるひとは、必読です。
以上、宣伝エントリでした。(内容についてはほとんど何も言ってないので、書評ではないです。書評書けっていわれたら書きますが。)
それよりも、合評会とか誰か*4企画すべきなんじゃなかろうか。

*1:美学と表象文化論との違いについてはコメントを控えます。

*2:ただ、最近入門書として書かれてないものに「入門」をつける本が多い。これは出版不況のなかでの営業努力としてわたしも全的に否定するわけではないのですが、それはそれで当該トピックに興味がある読者を逆に遠ざける結果になりはしないか、という懸念もあります。やっぱ入門書は入門書として書かれるべき。入門書が世にあふれると、ちゃんと書かれた入門書が埋もれるというデメリットもある。そして俺自身としては、これ読んで「分析美学やっぱムズい、つまらん」と思われるとちょっと困る。はっきりいってこれ最前線の学術書やからね

*3:社長としては、「税抜で4000円以下にした!」と言っていたけど、amazonとか税込価格で表示されるから、あまり安くなった印象は出せてないorz。まぁこれでも頑張ったほうだと思いますよ。日本で、この分量の、第一線の学術書がこの値段で買えるってのは、かなり稀。一般向け新書とはちげーんだよオラオラ。そして学生はこの値段に苦しめられるのである。あぁはやく電子書籍文化が発達しないものか。

*4:できれば研究費とってる先生とか、大学のお金動かせる先生とかが理想ですね!