学部3年生必修科目である「美学芸術学演習」が今日終了。一年間TAやりました。
授業内容
- 美学の基本文献(の一部抜粋)の翻訳をあらかじめ配布し、それについて担当学生が背景を説明しながら40分程度発表、その後全員でディスカッション。
- 夏学期は事前にこちらで文献を選定しておき、発表担当を割り振る。冬は生徒各自の問題関心を聞いた上で、当該分野の基本文献の中からテクストを指定。(基本的に、生徒にテクスト選択の自由はない。)
- レポートは夏冬それぞれ学期終了後に4000字以上。(「授業であつかった論者2人(自分が担当してない論者でもOK)の主張を比較検討しつつ論ぜよ」)
TAやってると、さすがに「配布箇所だけ翻訳読んで授業に望む」というわけにもいかんので、結構予習に追われた一年でした。つかれた。
(たぶん、この授業でいちばん多く学んだのは俺。)
以下が、読んだテクスト。
夏学期
- プラトン『饗宴』
- アリストテレス『詩学』
- プロティノス「美について」
- ディオニシウス・アレオパギタ『神名論』
- ヒューム「趣味の基準について」
- E・バーク『崇高と美の観念の起源』
- カント『判断力批判』
- ヘーゲル『美学』
- シラー『カリアス書簡』
- ニーチェ『悲劇の誕生』
- ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」
- A・ダントー「芸術の終焉の後の芸術」
冬学期
テクストが偏っているという批判もあるかもしれない。とはいえ、授業を終えて振り返ってみると、「美学芸術学」という名前に釣られてふらふらと迷い込んできた「美学?なにそれ、おいしいの?」みたいな学部生に、超古典テクストを無理やりドカンバコン打ち込むのも、悪くないと思った。どうせ興味ある分野の本は、そのうち自分で読むんだし。興味ある本にパッと飛びついて好き勝手に適当なこと論じ出すというのは学部生にありがちだが、それに対し、こちらから先手を打って(とりわけ学部生のうちに)基本的な論法といくつかのパースペクティヴを与えとくというのは、教育的にもとても良いことだと思う。学部生の頃の痛々しい自分を思い出すと、こういう授業を受けれるのは、かなり羨ましい*1。
ダラダラと受けてればそんなに負荷の高い授業でもないが、本気で予習してくれば、かなり勉強効果のある授業だったと思う。(毎回原文をチェックして翻訳のおかしいところを調べてくるような猛者は、いなかったけど。)あらゆるテクストについてそれなりに解説出来る教授がいて、ある程度哲学的文章が読める学生が揃っていないと、こういう授業はできない。
お疲れ様でした。
*1:とはいえ、学生に教養があった時代は、こういう古典テクストは授業で扱う前にみんな読んでたのかもしれない。そういう意味では、こういう古典テクストを読ませまくる授業に意義があるというのは、ちょっと悲しい現実。