昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

授業担当教員のresearchmapを見よう、という話

各学期の最初の授業のときに、毎回「学生の皆さんは授業担当教員のresearchmapを見るようにしましょう」という話をしてるんだけど、毎回同じ話をするのも飽きてきたので、いったんブログにまとめておくことにします。

 

以下、授業資料からの転載

 

↓↓↓↓↓↓

 

 みなさんはResearchmapというサイトは見たことがありますか?これは学者の業績まとめサイト、のようなものです。日本最大級の研究者データベース。「森功次」で検索してみてください。僕のResearchmapのページが検索の上位に出てくると思います。

 

こちら

researchmap.jp

 

 

 

 最近は科研費の申請でresearchmapの情報が参照されるようになったこともあって、多くの大学教員・研究者がResearchmapのページをつくっています。だいたい若手の研究者はresearchmapをきちんと整備している印象です(年配の先生の中には適当な人も多い)。

  • ※とはいえ、個人でHPをつくって情報をそっちにまとめている人もいるので、そういう人についてはまた個人HPを見たほうがいいんですが。

 

 

 学生の皆さんに言いたいのは、大学の授業をとるときは、その教員がどんな人か、何をやってる人かをみるために、リサーチマップを覗いておきましょうということです。「最近このひと何やってるのかな」とか、「業績どれくらいあんの」とか見ておくと、授業を聞くときの幅が広がります(業績が多い人のほうが良い学者、というわけでは必ずしもないんですが)。

 あと、大学の先生は、その人の本当の専門テーマではない授業を担当することもありますので、そういうときに「この人の専門はほんとうはこっちなんだ」というのを知っておくと、質問とかもしやすくなります。

 

 Researchmapのいいところは、一部の研究者が研究資料をupしてくれているところです(特に若手はこのあたりの資料公開に熱心な人が多い)。論文はもちろん、論文化されてない学会発表スライドとかをダウンロードできたりします。推しの研究者のリサーチマップは見ておくといいです。有益な資料が無料でダウンロードができたりします。レポートや卒論のアイデア探しに使ってください。

 最近ではオンライン授業の資料をupしてくれている先生もいます(わざわざ公開でupしてくれてるわけですから、資料の質はたいてい高いです)。他大学の授業の様子などを見てみたい人は、見てみるといいでしょう。

 

 

 プレゼン用のスライドというのは便利なもので、異分野のことをちょっと学ぶのにはとても有益なメディアです。耳学問にもってこいの道具なんですね(スライドは目で見るものですが)。最近はスライドを作るのが上手な人が増えてきました。ちょっと気になるテーマの発表スライドをワンクリックでダウンロードして、ササーッと見れる。これは学問的にはかなりすごい状況です。暇なときに、ぜひリサーチマップめぐりをやってみるといいと思います。

(とはいえ、これだけ見ても何もわからんわ、という類のスライドもたくさんあります。特に矢印がやたら出てくるスライドは、その「これだけ見てもわからん」系のスライドであることが多いので注意してください。スライドというのはあくまで説明のための道具、概略をつかむための図であり、それだけ見て全てを理解するようなものではない、という点を意識しておくことは大事です。ただ、それを意識しつつうまく使えば、とてもいい道具です[1])。

 

[1] 日本の省庁・自治体のHPなどには、情報量多すぎなスライド(いわゆる「ポンチ絵」)がいろいろと上がっていて、しばしばダメなスライドとして批判されますが、あれは本来は話の上手い官僚の人たちが会議や政治家への説明のために使う資料です(いろんな場で使い回せるように情報量が豊富になっている)。つまり、省庁作成のスライドは、個別対応の説明付きで見るための資料であって、学会での発表資料とも、商品説明のプレゼン資料とも種類が違います。

【告知】2/4 アーツカウンシル・フォーラム「表現者を支えるプロデュースと目利き力」(要申込)

告知です。

 

下記のイベントでモデレーターを務めます。

www.artscouncil-tokyo.jp

 

2021年度 アーツカウンシル・フォーラム「表現者を支えるプロデュースと目利き力」

 

2022年2月4日(金)

 

第一部 14:00~16:00

北村明子シス・カンパニー代表取締役、演劇プロデューサー)

山本豊津(東京画廊BTAP代表)

第二部 16:00~18:00

小山登美夫(小山登美夫ギャラリー代表取締役

土居伸彰(株式会社ニューディアー代表)

 

モデレーター(第一部・第二部とも)

森功次(大妻女子大学 国際センター専任講師)

 

※当日の配信では手話通訳が付きます。

※本イベントは事前申込制となります。

 

とても有名な方々の中に僕が入ってて「なんで?」という感じですが。

美術手帖』に芸術的価値に関して文章書いてたりしたので、お声がけいただいたっぽいです。(打ち合わせの時に「なんで僕なんですか?」って何回か確認した。)

 

年明けから急激に感染状況が悪化したのでどうなるかなーと思ってましたが、少なくとも現時点では開催予定です。登壇者は現地で対面でトークします。

実践者の方たちの話が聞けるいい機会なので、批評や芸術的価値といった気になる美学的トピックに関していろいろと質問できればいいな、と思ってます。

 

 

※2022/02/10追記

記録動画がupされました。

 

第1部


www.youtube.com

 

第2部


www.youtube.com

 

 

 

 

あと告知し忘れてたんですが、昨年こういう公開講座もやってました。

(もう多摩市のHPでは情報消えてました)

2020年11月19日(金曜日)18時~ 「対話型鑑賞の功罪」 ~美術の多様な楽しみ~

講師:森功次氏(大妻女子大学

多摩市×日野市 たま学びテラス 「第12回関戸地球大学院」 | 多摩市役所

 

いちおう記録として残しておきます。

 

 

 

来年度の予定としては

  • 慶応での非常勤は継続です。7年目ですね。
  • あと弘前大学での集中講義も継続です。こちらは3年目。

といった感じです。

慶応の授業(分析美学概論)はここ2年間はオンライン化していたので全国から外部聴講者を受け入れてたんですが、来年からは(少なくとも半分以上の回は)対面授業になるので、地方からの聴講は難しくなりますね。

弘前大学の非常勤は3年目なんですが、感染状況悪化のため、結局一回も現地にはいけてません。来年こそは行きたいな、、、。

最近のお仕事(2021夏)と、その補足解説

いくつかの仕事が世に出たのでお知らせです。

 

1.論文

森功次「われわれ凡人は批評文をどのように読むべきか :理想的観賞者と美的価値をめぐる近年の論争から考える」『人間生活文化研究』No.31, 2021.

http://journal.otsuma.ac.jp/2021no31/2021_365.pdf

2019年に一橋哲学・社会思想セミナーでやったレクチャー講演を改稿して論文化したものです。

講演のときとあまり本筋は変わってないんですが、いろいろと説明を追加してます。あと、教育に関する部分は削りました。講演の際は「公教育ではハブ能力を育てる教育をやっていくべきだ」という主張をしてたんですが、あそこはもう少し勉強してから書いたほうが良さそうかなと思ったので。

その部分に興味がある人は、リサーチマップに載せてる講演資料の方を見て下さい。

 

少し前に阪大の田中さんがロペスの本についての論文を書いていたので、そちらも併せて読むといいと思います。

https://doi.org/10.18910/77268

 

 

2.報告書

森功次「ビジネスパーソンのためのアート」本の流行と,教育的に注意すべきこと」『人間生活文化研究』No.31, 2021.

http://journal.otsuma.ac.jp/2021no31/2021_409.pdf

昨年、学内研究費(「大学教育の質的向上に関する研究」枠)を取ったので、その研究の報告書です。

この報告書は結構前に提出してたんですが、編集側の方でいろいろあって掲載が遅れたっぽいです(謝罪メールが来たので、たぶん投稿メールが見逃されてたんだと思う)。

 

最近流行りの「アート×ビジネス」本をいろいろと読んで、その動向についての考察を書いています。当初の研究計画では、この動向を「自己啓発」の観点と絡めていろいろ分析する予定だったんですが、コロナでいろいろあって(昨年はオンライン授業の準備で手一杯だった)できませんでした。今後の課題。

あと研究費取ったときには、「アート思考」ブーム牽引者の若宮さんとも「何かイベントやろうぜー」と話してたんだけど、これもコロナでできず。同窓会でやるか。

 

 

3.『美術手帖』2021年10月号(特集」:アートの価値の解剖学)にいくつか文章を書いてます。

 

 

a. 解説記事「「アートの価値」を知るための基礎分析」p.20-25

内容はこんな感じ

  • Lesson 1:価値語としての「アート」と、分類語としての「アート」はどう違う?
  • Lesson 2:芸術作品が持つ価値と、芸術的価値との違いとは?
  • Lesson 3:芸術的価値は一種類の価値なのか(一元論vs多元論)?
  • Lesson 4:多元論が説明すべき点、その1:ある価値が芸術的価値に入る基準は何か?
  • Lesson 5:多元論が説明すべき点、その2:各種の価値をどうやってまとめ上げるか?
  • Lesson 6:個別作品の価値とはまた別にある「アートの価値」とは?
  • Lesson 7:どの種の「アート」を念頭に置くのか?

この号のプレスリリースで冒頭の二つは読めます。

価格と価値はなぜ違う? 『美術手帖』10月号は「アートの価値」を特集|美術出版社のプレスリリース

 

 全体としては、「アート」という語のもついくつかの多義性を指摘しながら、芸術的価値についての基本的な論点を紹介してます。冒頭解説記事なので、あまり難しくはしたくなかったんだけど、ちょっとややこしい話になってるかもしれない。専門的な話をどこまで入れるかのバランスが難しかったです。文字数オーバーのため、編集段階でいくつかの論点を削りました。ほんとはここで「市場価格と芸術的価値が異なる理由」をもう少し解説したかったんだけど。

 編集側がきれいにレイアウトしてくれて、けっこう読みやすくなりました。感謝。

 

 

b.コラム「美術作品の教材化の功罪:「ビジネス×アート」における対話型鑑賞が取りこぼすもの」p.70-73

 こちらはコラムです。先程の報告書と同じような観点から、対話型鑑賞の良し悪しについて書いてます。解説とは違って、もう少し主張のある話を書いてる。

 何も打ち合わせしてないのに、少し前のページに載ってる副田一穂のインタビューと似たような論点になってて、図らずも高校のクラスメイト(&元ルームシェアエメイト)が同じような話をするかたちになってしまった。

 

 

c.企画「「アートの価値」を象徴する作品とは?」で、作品紹介してます。p.18

今号の執筆者がそれぞれアートの価値を象徴する作品を選ぶ、という企画です。

会田誠さんがツイートしたので、多くの人に公開されてしまった。

 

 

VOCA展の事件については前に論文で考察したので、詳細はこちらで。

 

お仕事については以上です。

 

 

あとは最近の報告だと

  • 『フィルカル』もVol.6. No.2が出ました。よろしくお願いします。
  • コロナにはかからず、なんとか無事に生きてます。非常勤先の慶應の職域接種でワクチンは早々に打てたし、家族も打てました。感謝。
  • 先週まで、大学の上司から命じられてOxford EMIの研修に一週間参加してました。しんどかった。
  • 第二子が何かと好奇心旺盛で困るんだけど、海連れてっても怖がらず平気で波打ち際をハイハイして砂食ってたので、強い子になりそう。
  • 秋学期の授業準備があまり進んでなくて、まずい。
  • 40歳になりました。

 

 

明日から新潟大学の集中講義です。結局オンラインですわ。新潟行きたかったのう。