いくつかの仕事が世に出たのでお知らせです。
1.論文
森功次「われわれ凡人は批評文をどのように読むべきか :理想的観賞者と美的価値をめぐる近年の論争から考える」『人間生活文化研究』No.31, 2021.
http://journal.otsuma.ac.jp/2021no31/2021_365.pdf
2019年に一橋哲学・社会思想セミナーでやったレクチャー講演を改稿して論文化したものです。
講演のときとあまり本筋は変わってないんですが、いろいろと説明を追加してます。あと、教育に関する部分は削りました。講演の際は「公教育ではハブ能力を育てる教育をやっていくべきだ」という主張をしてたんですが、あそこはもう少し勉強してから書いたほうが良さそうかなと思ったので。
その部分に興味がある人は、リサーチマップに載せてる講演資料の方を見て下さい。
少し前に阪大の田中さんがロペスの本についての論文を書いていたので、そちらも併せて読むといいと思います。
https://doi.org/10.18910/77268
2.報告書
森功次「ビジネスパーソンのためのアート」本の流行と,教育的に注意すべきこと」『人間生活文化研究』No.31, 2021.
http://journal.otsuma.ac.jp/2021no31/2021_409.pdf
昨年、学内研究費(「大学教育の質的向上に関する研究」枠)を取ったので、その研究の報告書です。
この報告書は結構前に提出してたんですが、編集側の方でいろいろあって掲載が遅れたっぽいです(謝罪メールが来たので、たぶん投稿メールが見逃されてたんだと思う)。
最近流行りの「アート×ビジネス」本をいろいろと読んで、その動向についての考察を書いています。当初の研究計画では、この動向を「自己啓発」の観点と絡めていろいろ分析する予定だったんですが、コロナでいろいろあって(昨年はオンライン授業の準備で手一杯だった)できませんでした。今後の課題。
あと研究費取ったときには、「アート思考」ブーム牽引者の若宮さんとも「何かイベントやろうぜー」と話してたんだけど、これもコロナでできず。同窓会でやるか。
3.『美術手帖』2021年10月号(特集」:アートの価値の解剖学)にいくつか文章を書いてます。
a. 解説記事「「アートの価値」を知るための基礎分析」p.20-25
内容はこんな感じ
- Lesson 1:価値語としての「アート」と、分類語としての「アート」はどう違う?
- Lesson 2:芸術作品が持つ価値と、芸術的価値との違いとは?
- Lesson 3:芸術的価値は一種類の価値なのか(一元論vs多元論)?
- Lesson 4:多元論が説明すべき点、その1:ある価値が芸術的価値に入る基準は何か?
- Lesson 5:多元論が説明すべき点、その2:各種の価値をどうやってまとめ上げるか?
- Lesson 6:個別作品の価値とはまた別にある「アートの価値」とは?
- Lesson 7:どの種の「アート」を念頭に置くのか?
この号のプレスリリースで冒頭の二つは読めます。
価格と価値はなぜ違う? 『美術手帖』10月号は「アートの価値」を特集|美術出版社のプレスリリース
全体としては、「アート」という語のもついくつかの多義性を指摘しながら、芸術的価値についての基本的な論点を紹介してます。冒頭解説記事なので、あまり難しくはしたくなかったんだけど、ちょっとややこしい話になってるかもしれない。専門的な話をどこまで入れるかのバランスが難しかったです。文字数オーバーのため、編集段階でいくつかの論点を削りました。ほんとはここで「市場価格と芸術的価値が異なる理由」をもう少し解説したかったんだけど。
編集側がきれいにレイアウトしてくれて、けっこう読みやすくなりました。感謝。
b.コラム「美術作品の教材化の功罪:「ビジネス×アート」における対話型鑑賞が取りこぼすもの」p.70-73
こちらはコラムです。先程の報告書と同じような観点から、対話型鑑賞の良し悪しについて書いてます。解説とは違って、もう少し主張のある話を書いてる。
何も打ち合わせしてないのに、少し前のページに載ってる副田一穂のインタビューと似たような論点になってて、図らずも高校のクラスメイト(&元ルームシェアエメイト)が同じような話をするかたちになってしまった。
c.企画「「アートの価値」を象徴する作品とは?」で、作品紹介してます。p.18
今号の執筆者がそれぞれアートの価値を象徴する作品を選ぶ、という企画です。
会田誠さんがツイートしたので、多くの人に公開されてしまった。
今月の美術手帖を開いたらいきなり自分のデカい筆跡と出くわしてビックリ(事前連絡なしだけど問題なし)。 pic.twitter.com/nIgmMcnSVR
— 会田誠 (@makotoaida) 2021年9月5日
VOCA展の事件については前に論文で考察したので、詳細はこちらで。
お仕事については以上です。
あとは最近の報告だと
- 『フィルカル』もVol.6. No.2が出ました。よろしくお願いします。
- コロナにはかからず、なんとか無事に生きてます。非常勤先の慶應の職域接種でワクチンは早々に打てたし、家族も打てました。感謝。
- 先週まで、大学の上司から命じられてOxford EMIの研修に一週間参加してました。しんどかった。
- 第二子が何かと好奇心旺盛で困るんだけど、海連れてっても怖がらず平気で波打ち際をハイハイして砂食ってたので、強い子になりそう。
- 秋学期の授業準備があまり進んでなくて、まずい。
- 40歳になりました。
明日から新潟大学の集中講義です。結局オンラインですわ。新潟行きたかったのう。