昆虫亀

森功次(もりのりひで)の日記&業務報告です。

輪島裕介『創られた「日本の心」神話――「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』 第三部 第八章


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輪島 裕介

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さて、第三部です。



第三部 「演歌」の誕生
第八章 対抗文化としてのレコード歌謡



この章けっこう面白い分析が満載なんですけど、全部は引用しきれない……(ので、興味あるひとは自分で本読んで。)

 60年代半ばのレコード歌謡論者はまずもって、昭和20〜30年代の知的な領域における大衆音楽理解と、そこにおけるレコード歌謡への非難及び蔑視に対抗していた……若い知識人が既存の知識人・文化人を打倒し否定しようとする動きの中で、彼らの「敵」が忌避したレコード歌謡の中でも、とりわけ軽蔑されていた側面を殊更に称揚する傾向が現れたのです。(p.187)







寺山修司は「歌謡曲」を「孤絶したアウトローが一人で歌うもの」と規定し、「みんなで歌う」ことによる「連帯」を価値とする「うたごえ」と明示的に対比させています。(p.204)



森[秀人]にとって「大衆芸術」の真正な担い手は、「股旅やくざ」と「遊女」、そしてその現代版としての「チンピラ」と「バーの女」であり、それらのアウトロー的人物像は市民社会からの「疎外」と「性的逸脱」によって特徴付けられています。(p.207)